【茶注38 万古焼　急須　緋襷】伊藤富有　共箱
志野焼き。重さ370g 全くの未使用品。無傷。底に貞の文字が入っています。木戸貞○さん？志野焼きの陶芸家です。好人物でした。私は焼き物を買う時に作家の人と話し、いやな感じがする時は焼き物も嫌な感じがします。作家の人との話が気持ちいい時はやはり、焼き物も好感が持てます。木戸さんの焼き物は好感が持てました。土はもぐさ土。ベンガラで赤茶色の模様をさらっと描いて、白いどろどろの長石釉をたっぷり掛けています。これが下に垂れずにうまく焼けています。焼成の難しい所で、これが魅力です。実に美しく、手にちょうど収まり、370gの重さですが、軽く感じます。茶碗の重心が少し上にあるようで、下手に作ると底の方が厚くなり、重心が下がり、おもーく感じます。底までうまく削っており、とても薄く、持った感じがいい。特に、その高台は、一回きりで削るのが大事で、ざらっとした唐津焼きや、井戸茶碗に共通する味わいがないと価値がないのです。買う時に作者と話したのですが、一回で削るのが当然と。一緒にいた弟子の方は、一回きりで削りあげるのは、なかなか難しいんですと感想を話してました。みごとな高台です。使い込めば、味わい深く育ち、いい色に変わっていくでしょう。釉薬をかける時に、底の方を片手でがっぷりつかむのですが、その時の指跡が五つ、みごとに残っています。これが安土桃山時代からの伝統のやり方なのです。しっかり守っています。口縁は山が五つくらいで、多からず、少なからずで、気持ちいいくらいすっきりしています。楽焼きの長次郎や本阿弥光悦を思い出します。